この春,製造業に就職するソフトウェアエンジニアへ(1/4)


ボクは一年間,ある大手電気メーカの情報システム部門で勤務した.
この一年間で学んだ事をまとめる.
最低限コレを押さえておけば,変な失望や誤解を招かなくてすむ.



製造業とは第2次産業である.

コレだけは自覚しておいてほしい.
あなたが入社する製造業とは第二次産業である.


つまり,何か実態のある材料を買って,実態のある材料を作る必要がある.
これには2つの意味がある.


1つは,必ずモノを流れるという事.
2つは,売上 ー 材料 ー 作成費用 ー 輸送量 = 利益


1つめは,ソフトウェアは無から何かを作り上げる事が出来る.
あなたはいままで,コンピュータという,インフラ一つでシステムを作り上げる事が出来た.


製造業は違う.
ドライバーがあっても,何も作れない.
ドライバーはタダの道具でしかない.

これは何を意味するか?
思うに簡単に独立できない事を意味する.
機械工学の学生がベンチャーの話をしているのを聞いた事があるか?


情報系の学校にいればひとりかふたりは,ベンチャー企業を起こす人もいたと思う.
だが,機械系では無理なんだ.材料を仕入れ,特殊な機械を作って材料を加工し,しかるべき経路で販売する.
敷居が高すぎる.


結果,会社は傲慢になる.「雇ってあげてるんだよ.」という雰囲気が凄くする.



先日読んだ,氷河期の猛吹雪にズダボロに引き裂かれた人々と、グングン成長した人たち - 分裂勘違い君劇場 by ふろむだの言っている事は少し無理がある.
集団転職なんて出来ないだ.僕らには闘争をするしか無いんだ.




2つめは,利益が出にくいという事だ.


資産を増やすには2つしか方法が無い.
1.収入を増やす.
2.支出を減らす.


製造業の場合,
安く買って,
安く組み立てて,
安く運び,
そして,高く売る.



しかし,高くは売れない.
市販で20万強する商品が,ボクの会社から出て行くときの値段は4万円程度である.


じゃぁ,どうするのか?


材料を安く仕入れる為に,下請けに圧迫をかけます.
安く作る為に,工場には外国人を大量に配置します.
派遣社員,子会社社員,パートタイマーを対象に採用します.
工場の勤務者は,激務の末に30代半ばで,設計部隊の20代後半の給与と同額です.

あなたが,はじめに衝撃を受けるのはここだと思う.
工場の人は,信じられないような安月給で,信じられないくらい肉体労働をします.


世界が違うのです.
いままで,大学や大学院で体験した,みんなが平等に仲良く,楽しくしている世界とは違います.
これは,ソフトウェアハウスの格差よりも大きいと思う.


これは,工場勤務者と設計業務勤務者の違いに限った事ではありません.



同じ設計業務勤務者でも大きな違いがあります.

取組んでいる作業は同じです.
同じフロアで,同じ机を並べて,同じ仕事の話をします.
でも..そこには明らかな差があります.


正社員には支給される作業着が,派遣社員や子会社には支給されません.
正社員には追加ボーナスが出ても,派遣社員・子会社には支給されません.
正社員には様々な施設に対する優待券がありますが,派遣社員や子会社にはありません.



そして,年を取っても出世できない正社員は,子会社の役員及び部長になります.....天降りです.


ボクが言いたいのは正社員の待遇がいかに良いか.
非正社員の待遇がいかに悪いかではありません.


そこには明らかな差があるという事実を受け止める必要があるという事です.
さらにいう,その格差で多くのメーカは,経営を維持できているという事です.



あなたはこう感じる,「使役する者と使役される者」の違いだと.
でも,あなたでさえ「使役される者」だと言う事を忘れてはいけません.

次回は製造業における,情報系の人間の扱いについてお話します.