いろいろな人への返事(2)

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モノとデータ

彼は、製造業の人々を「独立できない、転職できない」それ故「会社に飼われている」と評し、収益モデルからくる労働の過酷さを訴えている。

その通りです,会社に飼われています.
経営者の考えはこうです
「会社にある一流の機械を使って作業させてやってるんだ,オマエらが好きな設計をさせてやってるんだ,ありがたく思えよ.」

この問題に関する議論は,中村修二さんの特許料の問題を思い出してもらえるとありがたい.
中村さんの青色発光ダイオードで,日亜化学は1208億円の利益を得たと言われています.
それに対して,はじめに中村さんに支払われた額は2万円.


そして驚くべき事にこの額っていたって妥当なんです,日本の製造業ではね....*1


おかしいと思いませんか?会社は1208億儲け,凄い発明したって賞賛されます.
一方それを成し遂げた人はたったの2万円支給され,「今後も精進する様」になんて奨励されて終わり.
これが日本の企業とエンジニアの関係です.


この関係で良いのでしょうか?好きな事してるから良い?ホント?

ボクはそうは思わない.
好きな事して,凄い発見しても,生活の質が上がらなかったら...それでもあなたは好きな事をしてるって言えますか?*2

「形ある物を生む」と「トランジスタに保存されたデータを生む」の差を明確にしたい。両者ともにクリエーティブな作業だが、大きく異なるのは、その速度だ。生み出す速度、移動する速度、壊れる速度、変更する速度、すべてに置いて物は遅い。遅いとどうかというと、簡単にはそうできない事を意味する。次に思いつくのは生み出す過程の成熟度合い。形を作るテクノロジーは、イギリス産業革命以来開発され続け、今では品質一定で、安定して製造を行う事ができ、製品開発のノウハウが蓄積されている。データを作る産業は、まだ芸術的な要素もあり、品質や製造過程をエンジニアリングしはじめたばかりだ。

それも1つの側面だと思います.
でも,ボクはそれよりも大きい事は材料が必要な事だと思います.
トランジスタに保存されたデータを生む時にはコンピュータという材料がいるじゃないか?
っと反論されるかも知れません.しかし,それは製造業で言うところの生産の為の機械であり.モノを作る為の材料は別に必要です.

この材料があるせいで売上の半分は,消えていきます.
つまり,製造業はIT産業に比べて利益の回収が難しいとボクは思います.

そこで、製造業をIT野郎が思ったのが、「ベンチャーできないじゃん」という話だが、基本的にはできないでいいんだと思う。ベンチャー、スモールビジネスの価値の1つは、自分のやりたい事が、自分でできる幸せを感じれる事だと思う。機械系の学生でエンジン作りたいとか、車設計したいという人は、ベンチャーではなく、メーカーに行く方がやりたい事が実現できる選択となる。ベンチャーでやりたい人もいると思うけど(ビジネスモデルとかで?)、そういう人はやっている。


ボクはベンチャーを進めている訳ではありません.
ボクが言いたかったのは,機械系では会社との結合度が高く,その結合は非常に不利な条件で結合しているという事です.*3

メーカに行ってやりたい事を出来る人はホントに1握りです.
ボクの同期のエンジニアは25人程度いましたが,
まず事業所の段階で希望通りの人は18人.
部署単位の配属で希望が叶った人はわずか6人.
残りの人は思ってもいないところに配属されて,想像していたのと違う作業をしています.
人事のさじ加減一つで配属先は決まります.

場合によっては,ヒトが足りない部署に配属されるという結論になっています.
幸せを感じる方法は1つです,自分の携わる仕事を好きになる事だと思います.


ソフトウェアエンジニアのヒトは自分の好きな言語で,プログラムが組めれば良いっていう発想のヒトが多い.
銀行のシステムが作りたい.交通システムを作りたい.って言う感じのプログラムの用途思考のヒトは少ないと思います.
大きく見積もっても,webアプリがしたいとか,その階層だと思う.
それだけ,ソフトウェアの技術は汎用的である事を意味します.


機械系のヒトは違う.エンジンを作りたい.オーディオを作りたい.大型モータを作りたい.
このように目的があります.にも関わらず,全然違う内容をさせられる.
飛行機を作りたい..その思いで流体力学を必死勉強してきたヒトが,
その流体力学の知識を買われて車の設計に配属される.*4
これで幸せなはずが無い.

労働の厳しさ

製造業は肉体労働.IT業界は知的肉体労働なんて言われ方がしますね.
ボクはIT業界がアイディアだけで知的に楽しく働いているだなんてヒトコトも言っていませんよ.

涼しい部屋の中で少しクタビレタスーツを着て,コーヒを片手に睡眠時間を削りながらサーバと向かい合っているヒトと.
熱くてウルサくて匂いもキツくて,手を油まみれにして,ずっと立ち作業で毎日同じ作業をしているヒト.

どっちが大変なんだろうね.
ボクには,IT業界の経験無いからどちらが激務かは発言を出来ない.
でも,給料はキット製造業のラインのヒトが少ないと思うな.

会社からのサービス

この議論はずれていると思います.
この話は,「機械のヒトで,自分の希望通りの業務内容で,自腹では買えないような装置を使って,自身のやりたい事をしているヒト」の話だよね?
それって,業界に関係なく幸せだと思ういます.
だからその一部の恵まれたヒトは,会社のサービスを有意義に利用したら良いと思う.


まとめ

製造業の「改善」って結構楽しいんですよ.
これに関してはまたブログで書こうと思います.

なんにせよ,色々と書いてくれて感謝です.

*1:現在は見直されている企業が大半です.弊社でも出来高払いというのが導入されています.

*2:実際問題,多くのエンジニアが「好きな仕事してる」言えてしまうから凄いと思う.

*3:ここでさっきの中村さんの話

*4:すみません,工学的な知識が無いので適切かどうかわかりません.言いたい事は,大学で勉強した内容に対して複数の応用分野がある場合は,そのどこに携わるかは会社の判断一つって事です.