自動車部品メーカはさらに深刻です。
僕の所属する事業部は自動車部品なので、致命的なダメージを受けています。
ちょっと、ほとぼりが冷めるまで何も書かないで置こうかと思ったけど、状況が酷すぎる気がするので書いておきましょう。*1
ここ数ヶ月で、工場の中もずいぶんと静になりました。
月に数日、生産ラインが止まってます。
現場の派遣社員の方を大規模リストラしたせいで、食堂も人が少なく、朝の通勤路も圧倒的に人が減って歩きやすいです。
で、現場の人は削減したけど、設計部門の人間を減らすわけにはいきません。
理由は簡単です、なぜなら新製品の開発は止まらないからです。
この不況で自動車部品メーカは致命的なダメージを受けると僕は想像しています。*2
部品メーカの場合利益は以下のように計算できます。
利益=売上ー送料 (1)*3
この売上の部分をさらに分解すると、(2)のようになります。
売上=製品定価×販売台数 (2)
さらに製品定価は以下のように計算できます。*4
製品定価=製品原価+利益 (3)
さらに製品原価は以下のように計算できます。
製品原価=開発費÷販売台数+(部品代+組立コスト)(4)
部品と組立コストは、販売台数が減ればその分減るので問題ないのです。
生産能力が余剰にあまるので、現場の人間を減らせばそれですみます*5
しかし、開発費はそうではないです。
新製品を開発するときの開発費は一定
数十万台売れても、数百万台売れても一定。
ちなみに、自動車メーカは、新車の開発をストップしたり、完成をわざと遅らせたりしてるみたいです。*6
今までなら、車の台数が売れるから薄利多売でなんとかなりました。
今や車は売れません、しかしよりよい性能や安いコストで売れと自動車メーカは言い迫ります。
自動車の部品なんて自動車メーカ以外で取引できません。
例えば、極端な話ラジエータとか、オルタネータなんてオートバックスで売ってないし、
仮に売り出したとして、誰が買うでしょうか?*7
だから、自動車メーカの言いなり。
値段を下げろと言われたら下げるしかないです。
そして、削る場所はどこかって?
ここでもう一度式(4)を見てみましょう。
製品原価=開発費÷販売台数+(部品代+組立コスト)(4)
開発費は、企業存続のためなるべく削るべきではありません。*8それに、昨今自動車は電子制御部が増える複雑化の一方です、そんな簡単に開発費を下げることはできません。
部品代は大量に購入すれば削るコトができますが、販売台数が減っているので大量に購入することなんてできません。
組立コスト?部品の電子化、製品サイクルの短期化で、自動化ラインを作るより、人を雇った方が安いぐらいの時代です。そんな簡単に下げれません。
式(4)で下げれる場所はもうありません。
つまり、販売原価を下げるコトはほとんど不可能です。
でも、販売定価を下げるコトができるます。
そうです、式(3)にある利益です。
製品定価=製品原価+利益 (3)
もぅ、ここを削るしかないでしょう。
たぶん、この自動車業界直撃の不況は自動車部品メーカから利益を随分と奪うことでしょう。
さて、ここからが一番のポイントなのですが、一度下げた製品単価は簡単には上げれないということです。
2〜3年経って、もし景気が上を向いてきて、自動車が売れ始めたとき。
自動車メーカの一人勝ちが始まるのです。
販売台数が増えても、販売定価が上がるなんてコトはおそらくありえません。
式(4)の部品代は少しは下がるでしょうね。
仮に販売定価を一定に保つことが出来たとすれば、なんとかその浮いた部品代が利益に変換できるかもしれません。
でも、自動車メーカは販売定価を絶対に下げさせます。
それが彼らのやり方だからです。
つまり、この不況の後に自動車部品メーカにくるのは、薄薄利多売の時代なわけですよ。。。。